FOR LEASEHOLDERS / 借地人様へ
借地権の売却、承諾料の請求に、根拠のある物差しを
借地人様の悩みは、土地を持っていないがゆえに「自分の権利にいくらの価値があるのか」が見えにくいことです。地主も買取業者も利害が向き合う当事者です。不動産鑑定士が、借地権の価格と承諾料・更新料の水準に根拠を示します。

このページの結論
- 借地権には財産的な価値があり、売ることができます。ただし価格は借地権割合だけでは決まらず、地代・残存期間・承諾の得やすさで上下します。
- 第三者に売るには地主の承諾と、一般に譲渡承諾料が必要です。地主に買い取ってもらう場合は承諾料の問題が生じません。
- 建替え・増改築・名義変更の承諾料に法律上の定額はありません。借地非訟で裁判所が定める目安と比べると、提示額の位置づけが見えます。
- 当事務所は宅建業者ではないため買取りや売買の媒介は行いません。売却は地元の宅建業者をご紹介できます(紹介料は頂きません)。

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal|不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号
借地人様がよく直面する4つの場面
- 借地権を売りたい:住み替え、相続した実家の整理、建物の老朽化などを機に、借地権付き建物を手放したい場面です。売り先は地主・第三者・買取業者の3つに分かれ、手取り額も手続の負担も異なります。
- 建て替え・リフォームをしたい:契約に増改築を制限する特約があると、地主の承諾と承諾料が必要になります。承諾が得られないときは裁判所の許可を求める道もあります。
- 承諾料・名義変更料を請求された:売却や建替えの相談をしたところ、地主から金額を示された場面です。その金額が妥当かを判断する材料がありません。
- 更新料を求められた:契約期間の満了が近づき、更新料を請求された場面です。契約書の定めや過去の経緯によって、支払義務の有無から検討が必要です。
どの場面でも、相手方は地主か買取業者で、あなたと利害が向き合っています。相手の言い値を受け入れるか断るかの二択ではなく、根拠のある水準を知ったうえで話し合うことが、納得できる結論への近道です。
借地権の価格の考え方──鑑定士の視点
不動産鑑定評価基準は、借地権の価格を、借地権者が土地を使用収益することで得る経済的利益を貨幣額で表したものとし、その中心を「土地を長期間占有し、独占的に使用収益し得る安定的利益」と、「賃料差額」(その土地にふさわしい適正な地代と、実際に支払っている地代との差)が続くことによる利益としています。
つまり、周辺の水準より安い地代で長く借りられる借地権ほど価値が高く、地代が高い、残りの期間が短い、建替えや譲渡に地主の協力が得にくい借地権ほど価値が下がります。路線価図の借地権割合(60%、70%など)は、こうした個別事情を反映しない課税のための割合です。
| 売却先 | 価格の傾向 | 手続の負担 |
|---|---|---|
| 地主 | 完全な所有権に戻る価値の回復分を反映できる余地がある | 軽い(譲渡承諾料の問題が生じない) |
| 第三者 | 市場で成立する水準。借地を敬遠する買い手もいる | 重い(地主の承諾と承諾料) |
| 買取業者 | 転売のリスクと利益を見込む分、低くなる傾向 | 軽い(現金化が早い) |
※ 一般的な傾向であり、個別の借地で必ずこの順になるわけではありません。
詳しくは借地権の価格・売却相場と、地主に買い取ってもらう場合の考え方で解説しています。
承諾料の請求を受けたら確認したいこと
承諾料の額は法律で決まっていません。参考になるのは、借地非訟で裁判所が承諾に代わる許可を出す際に定める金額(財産上の給付)の目安です。日本地主家主協会の解説では、譲渡・転貸の許可は借地権価格の10%程度、全面的な改築は更地価格の3%〜5%程度、一部改築は更地価格の1%〜3%程度、非堅固建物から堅固建物への条件変更は更地価格の10%程度を基準に、諸事情を考慮して決定されると紹介されています。
提示額がこれらの目安から大きく離れているときは、次の点を確認してください。
- 計算の基礎が「借地権価格」なのか「更地価格」なのか(基礎が違えば金額は大きく変わります)
- 基礎となる価格をどう求めたのか(路線価からの割戻しか、実勢か)
- 建替えに伴って借地期間の延長や地代の改定がセットになっていないか
- 過去に支払った承諾料・更新料との関係
仮の数値で試算すると、更地価格5,000万円・借地権割合60%の土地では、借地権価格は割合法で3,000万円です。譲渡承諾料を借地権価格の10%とすれば300万円、全面改築の承諾料を更地価格の3%〜5%とすれば150万〜250万円という幅になります(説明のための仮の数値)。どの目安を当てはめるべきかは、契約の内容と経緯しだいです。

地主から示された承諾料・更新料、買取業者の提示額に根拠があるか。契約書と提示内容をお見せいただければ、セカンドオピニオン(5万円〜)で検証します。
提示額を検証してもらう初回相談無料/ご相談内容を相手方に伝えることはありません
地主が承諾してくれないとき
地主が借地権の譲渡や建替えを承諾しない場合、借地人は裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てることができます(借地非訟)。裁判所は原則として鑑定委員会の意見を聴き、許可するときは承諾料に当たる財産上の給付を命じることがあります。東京地方裁判所の案内によれば、多くの事件は概ね1年以内に終わっています。
譲渡の許可を申し立てると、地主が自ら借地権を買い取る「介入権」を行使する可能性がある点にも注意が必要です。その場合の対価は裁判所が定めます。
手続の流れは借地非訟とは、建替えを拒否されたときの考え方はコラム「借地権の建て替えを拒否されたら」で解説しています。江戸川区の借地については江戸川区の借地・底地の鑑定もご覧ください。
よくあるご質問
借地権を売るには、必ず地主の承諾が必要ですか。
借地権が土地の賃借権である場合、借地上の建物を第三者に売ると賃借権も移るため、地主の承諾が必要になります(民法612条)。地主が承諾しない場合でも、第三者が取得しても地主に不利となるおそれがなければ、裁判所に承諾に代わる許可を申し立てることができます(借地借家法19条)。法的な見通しは弁護士にご確認ください。
地主から提示された建替え承諾料が高すぎる気がします。
承諾料に法律上の定額はありません。借地非訟の実務で裁判所が定める目安として、全面的な改築では更地価格の3%〜5%程度とされることが多いと紹介されています(日本地主家主協会の解説による)。提示額がこの目安とかけ離れている場合は、その理由(構造の変更を伴うのか、期間の延長を伴うのか等)を確認する価値があります。
親から相続した借地の家でも、名義変更料を払う必要がありますか。
相続による借地権の承継は、第三者への譲渡とは扱いが異なると一般に説明されています。一方で、相続人以外への遺贈や、相続後に第三者へ売る場合は譲渡の承諾が問題になります。個別の判断は弁護士にご確認ください。相続した借地権の評価は、相続での借地権・底地の評価のページも参考になります。
借地権の買取業者の提示額が妥当か知りたいです。
セカンドオピニオン(5万円〜・税別)で、提示額の前提(地代・残存期間・承諾料の見込み・建物の状態など)を確認し、価格の考え方に不合理な点がないかを検証します。当事務所は買取りや売買の媒介を行わないため、売却を急がせる立場にはありません。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません
物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。