CASE 01
地主:長年地代を据え置いてきた借地の更新を迎える
状況
旧法借地権の更新時期を迎える地主様。地代は数十年ほとんど改定しておらず、契約書には「更新時に協議のうえ更新料を支払う」とだけ書かれています。更新料をいくら求めてよいか分かりません。
評価資料を用意した場合
現在の地代と適正な地代の差、更新後の期間を踏まえて、更新料と地代改定を組み合わせた案の根拠を評価で示せます。更新料だけで差を埋めるのか、地代も見直すのかを具体的な金額で比較でき、借地人様にも説明しやすくなります。
TOPIC / 更新料
借地権の更新料の相場は「更地価格の3〜5%程度」などと言われますが、そもそも法律上の支払義務はなく、払うかどうかは契約書と当事者の合意で決まります。借地権の更新料で揉めないために、判例の考え方、目安の数字の出どころ、更新料を地代とセットで考える鑑定士の視点を整理します。


執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal|不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号
更新料の話をする前に、契約している借地権(建物の所有を目的として土地を借りる権利)の種類を確認しておきましょう。更新のルールが種類ごとに異なるからです。
| 種類 | 設定された時期 | 期間と更新 |
|---|---|---|
| 旧法借地権 | 平成4年8月1日より前 | 更新は旧借地法のルールによる(借地借家法附則6条)。旧借地法の期間は堅固建物60年・非堅固建物30年、更新後は堅固30年・非堅固20年 |
| 普通借地権 | 平成4年8月1日以降 | 当初の存続期間は30年以上。更新後は最初が20年、2回目以降が10年(より長く定めればその期間)。地主の更新拒絶には正当事由が必要 |
| 定期借地権 | 平成4年8月1日以降 | 更新がなく、期間満了で更地にして返還するのが原則。更新料の問題は生じにくい一方、権利としての価値は相対的に低くなる |
※ 旧借地法の期間は、契約で堅固30年以上・非堅固20年以上を定めた場合はその期間となります。
現在も多くの借地で問題になるのは、平成4年8月1日の借地借家法施行より前に設定された旧法借地権です。施行後に更新を迎えても、契約の更新については旧借地法のルールが適用され続けます。旧法と新法の違いは旧法借地権と新法の解説で詳しく整理しています。
結論から言えば、借地借家法には更新料の支払義務を定めた規定はありません。最高裁昭和51年10月1日判決も、宅地の賃貸借の期間満了時に、賃貸人の請求があれば当然に賃借人に更新料の支払義務が生じるという商慣習ないし事実たる慣習は認められないと判断しています。
それでも更新料の支払義務が問題になるのは、主に次の3つのパターンです。
更新料を支払わなかった場合に契約を解除できるかについて、最高裁昭和59年4月20日判決は、更新料の性格や不払いが解除原因となるかは諸般の事情を総合考量し、具体的な事実関係に即して判断すべきとしました。そのうえで、更新料が更新後の契約の重要な要素として組み込まれ、当事者間の信頼関係の基盤をなしていた事案で、不払いによる解除を認めています。
借地契約の更新には、当事者が話し合って更新する「合意更新」と、法律の規定によって更新される「法定更新」があります。
合意更新
当事者の話合いで更新する
法定更新
合意がなくても法律で更新される
借地借家法5条は、期間満了時に借地人が更新を請求したとき、建物がある場合に限り従前の契約と同一の条件で更新したものとみなすとしています。地主がこれを拒むには遅滞なく異議を述べる必要があり、その異議には正当の事由(双方が土地の使用を必要とする事情、借地に関する従前の経過、土地の利用状況、立退料などの財産上の給付の申出を考慮して判断されます)が必要です(同法6条)。なお、旧法借地権の更新は旧借地法のルールによります(附則6条)。
実務では、更新料の支払で合意できないまま期間が満了し、借地人が土地の使用を続けることで法定更新となるケースがあり得ます。このとき、契約書の更新料特約が法定更新の場合にも適用されるかどうかが争点になることがあります。法定更新の場面での特約の解釈は、詳しくは弁護士にご確認ください。
借地権の更新料の相場としてよく挙げられるのは、次のような数字です。内藤寿彦法律事務所(弁護士)の解説では、東京都内の場合、更地価格の3%と言われることがある、借地権価格の5%と言われることもある、と紹介されています。KRE Appraisal本体サイトの旧記事でも、関東圏の目安として「更地価格の3%〜5%程度」「借地権価格の5%程度」と紹介していました。
ただし、同じ弁護士の解説自身が、こうした数字の根拠は分からないと述べています。更新料の相場は、法的な基準でも裁判所が定める基準でもなく、地域の慣行や契約の経緯によって大きく異なるものとして扱う必要があります。
| 計算の方法 | 計算式 | 試算額 |
|---|---|---|
| 更地価格の3% | 5,000万円 × 3% | 150万円 |
| 更地価格の5% | 5,000万円 × 5% | 250万円 |
| 借地権価格の5% | 3,000万円(更地5,000万円×借地権割合60%)× 5% | 150万円 |
※ 更地価格5,000万円・借地権割合60%は説明のための仮の数値です。借地権割合が6割なら「更地価格の3%」と「借地権価格の5%」はほぼ同じ水準になります。
試算のとおり、目安の選び方だけで100万円単位の差が生じます。さらに、更新料の妥当性は地代の水準や更新後の期間とも関係します。数字だけを持ち出して交渉すると、互いに都合のよい目安を主張し合って平行線になりがちです。

更新時期が近づいている地主様・借地人様へ。契約書と現在の地代をうかがえれば、更新料と地代をどう組み立てて話し合うべきかの見立てをお伝えします。
更新料の根拠を相談する初回相談無料/ご相談内容を相手方に伝えることはありません
借地をめぐる一時金には、更新料のほかに、借地権を売却するときの譲渡承諾料(名義変更料)があります。両者の大きな違いは、合意できなかったときの出口です。
つまり更新料は、当事者の話合いで決めるしかない一時金です。決まらなければ、支払義務そのものを訴訟などで争うことになり得ます。売却を考えている方は、更新料と承諾料の両方が問題になることもありますので、譲渡承諾料の解説もあわせてご覧ください。当事務所は宅地建物取引業者ではないため売却の手続は行いませんが、売却は地元の宅建業者をご紹介できます(紹介料は頂きません)。
不動産鑑定評価基準は、継続賃料(すでに続いている賃貸借の賃料を改定する場合の賃料)を求める際、契約の更新を契機とする改定で更新料が支払われるときは、その額を総合的に勘案するとしています。つまり鑑定評価の考え方では、更新料と地代は別々の話ではなく、一体として評価される関係にあります。
具体的には、地代が周辺の水準より低く据え置かれてきた借地では、その差を更新料で補うという考え方が成り立ちます。反対に、地代が十分な水準にある借地で高額の更新料を求めれば、地主側の受け取りが過大になるおそれがあります。更新料だけを切り出して「相場は何%か」を議論するより、今後の地代とあわせて「更新後の期間にわたって地主と借地人の経済的利益が釣り合うか」を検討するほうが、双方にとって納得しやすい結論になります。
法的な主張の組立てが必要な場合、まだ弁護士に依頼されていない方には、弁護士のご紹介も可能です。当事務所では、交渉の目安には価格等調査報告書(15万円〜・税別)、紛争になっている場合は価格等調査30万円・鑑定評価書60万円(税別)を起点にご提案します。
CASE
※ 実際のご相談内容ではなく、起こりうる状況として作成したシナリオです。実在の人物・案件とは関係ありません。
CASE 01
状況
旧法借地権の更新時期を迎える地主様。地代は数十年ほとんど改定しておらず、契約書には「更新時に協議のうえ更新料を支払う」とだけ書かれています。更新料をいくら求めてよいか分かりません。
評価資料を用意した場合
現在の地代と適正な地代の差、更新後の期間を踏まえて、更新料と地代改定を組み合わせた案の根拠を評価で示せます。更新料だけで差を埋めるのか、地代も見直すのかを具体的な金額で比較でき、借地人様にも説明しやすくなります。
CASE 02
状況
前回の更新で更新料を支払った借地人様。今回も同額以上を請求されましたが、契約書に更新料の特約はなく、地代もこの間に何度か値上げされています。
評価資料を用意した場合
支払義務の有無は弁護士に確認していただく一方、仮に支払う場合に妥当な水準がどの程度かを、地代の改定経過も踏まえて評価できます。義務の議論と金額の議論を分けて整理することで、話合いの落としどころが見えやすくなります。
借地借家法には更新料の支払義務を定めた規定はありません。最高裁昭和51年10月1日判決は、宅地賃貸借の期間満了時に賃貸人の請求があれば当然に更新料の支払義務が生じるという慣習は認められないと判断しています。支払義務が問題になるのは、契約書に更新料の特約がある場合や、当事者が支払を合意した場合などです。個別の判断は弁護士にご確認ください。
弁護士の解説では、東京都内の場合に更地価格の3%、あるいは借地権価格の5%と言われることがあると紹介されていますが、同じ解説で根拠は分からないとも述べられています。更地価格の3〜5%程度という幅で語られることもあります。いずれも法的な基準ではなく、地域や契約の経緯で大きく異なります。
過去に支払った実績があっても、それが将来の更新時にも支払う合意だったとは限らないと判断する下級審の裁判例が多いと紹介されています。前回の支払が契約書の特約に基づくものか、その時限りの合意だったのかによって結論が変わり得るため、契約書と当時の経緯を確認したうえで弁護士にご相談ください。
譲渡承諾料や建替えの承諾料と違い、更新料の額を裁判所に定めてもらう借地非訟の手続はありません。借地非訟の6つの類型に更新料は含まれていないためです。話合いで決まらなければ、支払義務の有無そのものを訴訟などで争うことになり得ます。だからこそ、交渉段階で根拠のある金額を示すことが重要です。
更新料の相場として言われる目安は、旧法借地権か新法の普通借地権かで区別されて語られているわけではありません。ただし、旧法借地権は更新後の期間が堅固建物30年・非堅固建物20年と長く、更新の意味合いが新法と異なります。更新後に借地人が土地を使える期間の長さは、更新料の妥当性を考えるうえで一つの要素になります。

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。