TOPIC / 底地の価格

底地の買取相場はなぜ安いのか──価格の決まり方と損をしない売り方

底地の買取相場は、同じ土地の更地価格と比べて大きく下がるのが通常です。なぜそうなるのか、買取業者の提示額がさらに低くなる構造は何か、そして地主様が取りこぼしを防ぐ売り方を、不動産鑑定士が整理します。

借地人の住宅が建ち並ぶ住宅地

このページの結論

  • 底地(借地権が付いている土地の所有権)は「自分で使えない・返してもらいにくい・売りにくい」という三重の制約があり、更地より大幅に安くなります。
  • 「更地価格−借地権価格」は目安の一つにすぎず、地代が低い底地は収益性の低さを反映してさらに低くなるのが一般的です。
  • 買取業者は出口(借地人への売却や再販)のリスクと利益を見込むため、提示額は理論的な底地価格より低くなりやすい構造です。
  • 借地人への売却や、借地権との同時売却では、併合による価値の増分を分け合えるため、業者への売却より有利な価格が成立し得ます。
吉田 健人

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal|不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号

底地とは何か──底地の買取相場が安くなる三重の制約

底地とは、不動産鑑定評価基準(国土交通省が定める鑑定評価のルール)の定義で「宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権」をいいます。借地人が建物を建てて使っている土地を、地主様の側から見たときの権利です。登記簿の上では地主様が土地の所有者ですが、その中身は更地を所有している場合とはまったく異なります。

底地の買取相場が更地よりはるかに安くなる理由は、次の三つの制約に整理できます。

  • 自分で使えない:土地の上には借地人の建物があり、地主様が自ら住んだり、駐車場にしたり、建て替えて貸したりすることはできません。
  • 返してもらいにくい:借地借家法では、期間が満了しても建物がある限り借地人の請求で契約が更新されるのが原則で、地主様が更新を拒むには「正当の事由」が必要です。いつ土地が戻ってくるのか、見通しが立ちにくい権利です。
  • 売りにくい:買い手は地代を受け取る権利しか得られないため、一般の住宅購入者は買い手になりません。買い手の層が限られること自体が、価格を押し下げます。

加えて、地代そのものが低い水準に据え置かれている底地も少なくありません。何十年も前に決めた地代がほとんど改定されず、固定資産税・都市計画税などの公租公課を差し引くと手元に残る額がごくわずか、という例もあります。受け取れる収入が小さければ、その収入を生む権利である底地の価格も低くなります。地代の水準そのものの考え方は、地代の相場の解説記事で紹介しています。

底地価格の目安──「更地価格−借地権価格」と、その限界

底地の価格の見当をつけるとき、最もよく使われるのが割合法(更地価格に借地権割合を掛けて借地権価格を求め、残りを底地とみる方法)です。借地権割合が60%の地域なら、底地は更地価格の40%という計算になります。

割合法による底地価格の目安(説明のための仮の数値)

更地価格

5,000万円

借地権が付いていない場合

借地権価格

3,000万円

更地価格×60%

底地価格の目安

2,000万円

更地価格の40%

※ 更地価格5,000万円・借地権割合60%は説明のための仮の数値です。実際の価格を示すものではありません。

しかし、実際の底地の取引ではこの理論値よりさらに低くなるのが一般的です。割合法は、借地権と底地を足すと更地価格になることを前提にしていますが、借地権と底地が別々の人に分かれている状態では、足し合わせても更地価格に届かないことが多いためです。とくに地代が低い底地は、収益性の低さがそのまま価格に表れます。

たとえば上の例で、年間の地代が60万円、公租公課が20万円だとすると、地主様の手元に残るのは年40万円です。これを仮に年3%の利回りで割り戻すと約1,333万円、2%なら2,000万円になります。利回りの置き方ひとつで結論が大きく動くことが分かります(ここでの地代・公租公課・利回りはいずれも計算の仕組みを示すための仮の数値で、実際の取引利回りを示すものではありません)。

同じ土地でも見方によって底地の価格は変わる(説明のための仮の数値)
見方計算底地価格
割合法5,000万円 ×(1−60%)2,000万円
地代収入から(利回り3%と仮定)年40万円 ÷ 3%約1,333万円
地代収入から(利回り2%と仮定)年40万円 ÷ 2%2,000万円

※ 年間地代60万円・公租公課20万円・利回りは説明のための仮の数値です。

鑑定士の視点──評価基準は底地をどう評価するか

私たち鑑定士が底地を評価するときは、不動産鑑定評価基準の考え方に沿います。評価基準は、底地の価格を「借地権設定者に帰属する経済的利益」、具体的には

  • 実際に受け取っている地代から諸経費等を差し引いた部分の、契約期間に対応する経済的利益
  • 期間満了等によって土地が戻ってくる場合の経済的利益(復帰価値)

の現在価値と位置づけています。さらに、将来見込まれる更新料や承諾料などの一時金も、底地の価格を構成し得るとしています。そのうえで、底地の鑑定評価額は「実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格」と、取引事例に基づく比準価格とを関連づけて決定するとされています。

つまり底地の価格は、割合法の「40%」から機械的に決まるものではなく、いくらの地代が、あと何年、どの程度確実に入ってくるのか、更新料や承諾料をどの程度見込めるのか、いつ土地が戻る可能性があるのかを積み上げて求めるものです。評価基準は借地権と底地の価格は密接に関連し合っているので相互に比較検討すべきとしており、底地だけを切り離して眺めるのではなく、借地権側の価格とあわせて検討することも求められています。

買取業者の底地の買取相場が低くなる構造

底地を専門に扱う買取業者は各地にあり、手続が早く、借地人との交渉を引き受けてもらえるという利点があります。一方で、提示される買取価格は、前の章で見た理論的な底地価格よりさらに低いことが少なくありません。これは業者が不当に安く買いたたいているというより、業者の事業の構造から生じるものです。

  • 業者は「安く買いたい当事者」である:業者は買い取った底地を、借地人に売る、あるいは借地権と合わせて完全な所有権として再販するといった出口で利益を上げます。仕入れ値である買取価格は、低いほど事業として有利になります。
  • 出口のリスクとコストを見込む:借地人が買い取りに応じるか、いつ応じるかは分かりません。交渉が長引けば、その間の資金負担や手間がかかります。業者はこうした不確実性を価格に織り込みます。
  • 利益を確保する:転売で得る利益も当然に見込まれます。

「すぐに現金化できる」「借地人との交渉を任せられる」という手軽さの対価として価格が下がる、と理解しておくのが実態に近いでしょう。業者に売ること自体が悪いわけではありません。ただし底地は個別性が強く、業者ごとに見立てが分かれます。一社の提示額をうのみにせず、複数の見立てを比べることが、損を避ける第一歩です。

私たち鑑定士は売買の当事者ではありません。業者の提示額がどのような前提(地代の見通し、借地人が買い取る見込み、利回り)で組み立てられているかを、中立の立場で検証できます。

資料を示しながら説明する様子

買取業者から底地の買取価格を提示されたら、契約する前に一度確かめてみませんか。セカンドオピニオン(5万円〜・税別)で、提示額の前提と計算に不合理な点がないかを検証します。

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損をしない売り方──借地人への売却と同時売却

底地の売り先は買取業者だけではありません。地主様が有利な価格を得られる可能性があるのは、借地人が関わる次の二つのルートです。

ルート1:借地人に底地を売る

借地人が底地を買い取れば、その土地は借地人にとって完全な所有権になります。地代の支払いがなくなるうえ、建替えや売却のたびに地主の承諾を得る必要もなくなり、担保としても使いやすくなります。借地人にとってのメリットが大きいため、業者より高い価格が成立しやすいのが特徴です。相続や住宅ローンの借換え、建替えの検討を機に、借地人の側から買取りを希望することもあります。

ルート2:借地人と同時に売却する

地主様の底地と借地人の借地権をそろえて売れば、買い手は完全な所有権の土地として購入できます。別々に売るより全体の価値が高まり、その差額(増価分)を地主様と借地人で分け合えるため、双方にとって有利になりやすい方法です。借地人との関係が良好であれば、有力な選択肢になります。

売り方による価格水準のイメージ(説明のための仮の数値)
更地価格(完全な所有権)5,000万円
底地の割合法による目安2,000万円
地代収入から見た底地(利回り3%と仮定)約1,333万円
同時売却で増価分を折半した場合の地主取り分(一例)約1,667万円

※ 更地価格5,000万円の土地を想定した仮の数値です。業者の買取価格は個別に大きく異なるため、ここでは数値を示していません。同時売却の地主取り分は、借地権を3,000万円、底地を約1,333万円と仮定し、完全な所有権として5,000万円で売れた場合の増価分(約667万円)を折半した一例です。配分の方法は一つではありません。

底地の売り方の比較
売り方価格水準の傾向ポイント
買取業者に売る低くなりやすい早く手間が少ない。転売のリスクと利益が価格に織り込まれる
借地人に売る中〜高併合による増分を借地人が評価できる。借地人の資金力・意向が鍵
借地権と同時に売る高くなりやすい完全な所有権として売れる。借地人の協力と増価分の配分の合意が前提

なお、当事務所は宅建業者ではないため売買の媒介・買取りは行いません。売却は地元の宅建業者をご紹介できます(紹介料は頂きません)。私たちが担うのは、どの売り方でも交渉の土台になる「価格の根拠」です。同時売却での増価分の配分や、借地人に提示する価格の考え方は、地主・借地人間の買取りのページで詳しく解説しています。

底地の買取相場を鑑定評価で押さえてから交渉する

底地は価格の目安が立てにくく、業者とも借地人とも、根拠を持たないまま交渉すると相手の数字を基準に話が進みがちです。鑑定評価では、地代の水準と改定の見通し、契約の残存期間、将来の一時金、同時売却や借地人への売却で生じる増価分まで踏まえて価格を示します。

  • 業者の提示額が妥当か確かめたい:セカンドオピニオン(5万円〜・税別)
  • 借地人との話し合いの土台となる金額を知りたい:価格等調査報告書(15万円〜・税別)
  • 借地人への売却価格を合意したい、第三者に示す正式な資料が必要:鑑定評価書(30万円〜・税別)

売却に伴う譲渡所得税などの具体的な計算や節税の可否は税務判断を伴うため、税理士にご確認ください。借地人との契約関係や明渡しの問題は、弁護士にご確認ください。

CASE

底地の売却で想定されるケース

※ 実際のご相談内容ではなく、起こりうる状況として作成したシナリオです。実在の人物・案件とは関係ありません。

CASE 01

業者の提示額が低く、売るべきか迷っている地主様

状況

先代から相続した貸地を整理したいと考え、買取業者に相談したところ、想像よりかなり低い金額を提示された。地代は長年据え置かれており、ほかに比べる物差しがない。

評価資料を用意した場合

地代収入から見た収益価格と割合法による価格を並べ、業者の提示額がどの前提で組み立てられているかを確認できます。そのうえで、業者に売るか、借地人に打診するかを判断する材料になります。

CASE 02

借地人から底地を買い取りたいと申し出があった地主様

状況

借地人から、建替えを機に底地を買い取りたいと申し出があった。借地人の提示額が割合法の数字どおりで、それが妥当なのか分からない。

評価資料を用意した場合

借地人が買い取る場合は、併合による価値の増分を考慮した価格(限定価格)が問題になります。増分をどう配分するかの根拠を示すことで、双方が納得しやすい価格の話し合いにつなげられます。

よくあるご質問

底地の買取相場は「更地価格の何割」と決まっているのですか。

決まった割合はありません。更地価格から借地権価格を差し引いた「割合法」の数字は目安の一つですが、実際の底地の価格は地代の水準、契約の残存期間、将来受け取れる一時金の見込み、借地人との関係などで大きく変わります。買取業者の提示額は、さらに転売のリスクと利益を見込んだ水準になります。一律の「◯割」で判断せず、個別の事情を踏まえて検討することをおすすめします。

買取業者から底地の買取価格を提示されました。妥当かどうか確認できますか。

セカンドオピニオン(5万円〜・税別)で、提示額の前提となる地代・契約条件・利回りの置き方などに不合理な点がないかを検証できます。検証の結果、提示額に不合理な点が見当たらない場合は、その旨を率直にお伝えします。

底地を借地人に売る場合、買取業者に売るより高くなりますか。

借地人は底地を取得すると土地の完全な所有権を得られるため、第三者より高い価格を受け入れる合理性があります。不動産鑑定評価基準でも、借地人が底地を買い取る場合は「市場性の回復等に即応する経済価値の増分」に留意すべきとされています。ただし借地人の資金力や意向次第で、成立するかどうかは別の問題です。

底地を売ったときの税金も計算してもらえますか。

譲渡所得の税額計算や節税の可否は税務判断を伴うため、税理士にご確認ください。当事務所は、その前提となる底地の価格の評価を担当します。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

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