CASE 01
借地人:老朽化した木造住宅を建て替えたいが、承諾料の提示が高い
状況
築年数が古い木造住宅を、同じ木造2階建てに建て替えたい借地人様。地主様からは、借地条件の変更と同じ水準の承諾料を求められ、判断に迷っています。
評価資料を用意した場合
工事が全面改築にとどまるのか、借地条件の変更に当たるのかを契約書で整理し、建て替えによる借地権の価値の変化を評価すれば、どの目安を参照すべきかを資料で示せます。区分の法的な判断は弁護士にご確認いただくことになります。
TOPIC / 建替え・増改築承諾料
借地権の建て替え承諾料の相場は、全面改築なら更地価格の3〜5%、一部改築なら1〜3%程度と言われ、木造から堅固な建物への変更ではさらに高い水準が紹介されています。どの目安が当てはまるかは工事の内容と契約の定めで決まり、妥当な金額は借地権の価値がどれだけ変わるかから確かめる必要があります。


執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal|不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号
借地の上の建物は借地人様の所有物ですが、建て替えやリフォームを自由にできるとは限りません。地主様の承諾が問題になるのは、主に次の3つの場面です。
7条について補足します。借地権の存続期間が満了する前に建物が滅失し、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造した場合、地主の承諾があれば、借地権は承諾日または築造日のいずれか早い日から20年間存続します。そして、借地権者が新たに築造する旨を通知し、地主が通知を受けてから2か月以内に異議を述べなかったときは、承諾があったものとみなされます(同条2項)。
ただし、この「2か月異議」の仕組みには限界があります。契約の更新後に通知した場合には適用されず、平成4年8月1日の借地借家法施行より前に設定された借地権(旧法借地権)の建物滅失後の築造による期間の延長は、従前の例(旧借地法のルール)によります(附則7条)。また、7条は存続期間の延長に関する規定であり、契約書の増改築制限特約についての承諾とは別の問題として整理されます。通知さえすれば承諾料は要らない、とは言えない点に注意してください。
建て替え承諾料の相場として紹介されることが多いのが、日本地主家主協会(地主・家主の団体)のウェブ解説にある目安です。借地非訟で裁判所が承諾料を定める場合について、同解説では次のように紹介されています。
譲渡承諾料が「借地権価格」に対する割合で語られるのに対し、建て替え・条件変更の承諾料は「更地価格」に対する割合で語られる点が特徴です。いずれも裁判所が許可する場合の目安であり、当事者間の交渉額を拘束するものではありません。
木造から鉄筋コンクリート造へ建て替える場合など
※ 説明のための仮の数値です。一般に言われる目安の率をそのまま掛けたもので、個別の事情による増減は反映していません。
| 工事の内容 | 該当しやすい区分 | 目安の率 | 更地5,000万円での試算 |
|---|---|---|---|
| 外壁・屋根の補修、内装の更新 | 承諾不要のことも(契約次第) | ― | ― |
| 増築・一部の建替え | 増改築(一部改築) | 更地価格の1〜3% | 50万〜150万円 |
| 木造住宅を木造住宅に建て替え | 増改築(全面改築) | 更地価格の3〜5% | 150万〜250万円 |
| 木造住宅を鉄筋コンクリート造に建て替え | 借地条件の変更 | 更地価格の10%程度 | 約500万円 |
※ 区分は一般的な整理です。どの区分に当たるかは契約書の文言と工事内容で判断され、詳しくは弁護士にご確認ください。

リフォームの承諾料で最初に迷うのは、「その工事が増改築に当たるのか」という点です。承諾が必要かどうかは法律で一律に決まっているのではなく、まず契約書の増改築制限特約の文言によります。「増改築」「改築」「大修繕」など、どの工事を制限しているのかは契約ごとに異なります。
借地借家法17条2項は、増改築を制限する借地条件がある場合に「土地の通常の利用上相当とすべき増改築」について協議が調わないとき、裁判所が地主の承諾に代わる許可を与えることができるとしています。つまり法は、増改築制限特約そのものを否定しているわけではなく、相当な増改築であれば裁判所の許可で進められる道を用意しているのです。
外壁の塗装や設備の交換のような工事と、柱や床面積に手を加える工事とでは、特約との関係が大きく異なります。工事の見積りを取る段階で契約書を確認し、判断に迷う場合は早めに地主様と話し合うことが、後のトラブルを防ぐ近道です。法的な判断は、詳しくは弁護士にご確認ください。
木造などの非堅固建物から、鉄筋コンクリート造などの堅固建物への建て替えは、単なる増改築ではなく借地条件の変更に当たります。借地借家法17条1項は、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により、現在借地権を設定するなら異なる建物の所有を目的とするのが相当であるにもかかわらず協議が調わないとき、裁判所が借地条件を変更できるとしています。
目安が更地価格の10%程度と高いのは、堅固な建物を建てられるようになることで、借地人様が土地を使える期間と使い方の幅が大きく広がるからです。旧借地法では、借地権の存続期間は堅固建物60年・非堅固建物30年、更新後は堅固30年・非堅固20年とされていました。旧法借地権のもとで堅固建物所有目的に変われば、将来の更新後の期間も長くなり得ます。地主様から見れば、土地が戻ってくる見込みがそれだけ遠のくということです。
承諾料の目安は率で語られますが、私たち鑑定士がその妥当性を検討するときは、建て替えによって何がどれだけ変わるかから考えます。不動産鑑定評価基準は、借地権の価格を決める際に総合的に勘案すべき事項として、借地権の態様(堅固建物か非堅固建物か等)や建物の残存耐用年数、契約締結の経緯・経過期間・残存期間、授受された一時金、将来見込まれる一時金などを挙げています。
たとえば、築年数が古く残存耐用年数が短い建物を新築に建て替えれば、借地権者が土地を使い続けられる見込みは大きく伸びます。堅固な建物への変更であれば、その効果はさらに大きくなります。承諾料は、この変化によって借地権者に生じる利益と、地主が失う復帰の期待とのバランスとして理解すると、率の目安が当てはまる場面・当てはまらない場面が見えてきます。
また評価基準は、借地条件の変更に伴って地代を改定する場合、条件変更承諾料や増改築承諾料の額を勘案するとしています。承諾料を受け取る代わりに地代の改定幅を抑える、あるいは承諾料を抑える代わりに地代を見直す、という組み合わせも考えられます。地代の水準については地代の相場の解説もあわせてご覧ください。
当事務所は、地主様・借地人様のどちらの依頼でも同じ基準で評価します。交渉の資料には価格等調査報告書(15万円〜・税別)、借地非訟に提出する資料には鑑定評価書(争訟案件は60万円〜・税別を起点)をご提案します。
CASE
※ 実際のご相談内容ではなく、起こりうる状況として作成したシナリオです。実在の人物・案件とは関係ありません。
CASE 01
状況
築年数が古い木造住宅を、同じ木造2階建てに建て替えたい借地人様。地主様からは、借地条件の変更と同じ水準の承諾料を求められ、判断に迷っています。
評価資料を用意した場合
工事が全面改築にとどまるのか、借地条件の変更に当たるのかを契約書で整理し、建て替えによる借地権の価値の変化を評価すれば、どの目安を参照すべきかを資料で示せます。区分の法的な判断は弁護士にご確認いただくことになります。
CASE 02
状況
木造建物所有目的で貸している土地で、借地人様から鉄筋コンクリート造の共同住宅への建て替えを打診された地主様。承諾するなら、土地が長く戻らないことに見合う条件にしたいと考えています。
評価資料を用意した場合
条件変更の前後で借地権と底地の価値がどう変わるかを評価し、承諾料と地代改定を組み合わせた提案の根拠をつくることができます。借地非訟になった場合も、主張を組み立てる資料として使えます。
日本地主家主協会の解説では、借地非訟で増改築の許可をする場合、全面的な改築は更地価格の3〜5%、一部の改築は更地価格の1〜3%程度とされることが多いと紹介されています。木造から鉄筋コンクリート造への変更など借地条件の変更を伴う場合は、更地価格の10%程度が一応の基準とされます。いずれも裁判所が定める場合の目安で、当事者間の交渉額を拘束するものではありません。
承諾が必要かどうかは、契約書の増改築制限特約の文言と工事の内容によって判断されます。一般に、建物の構造や床面積に手を加えない内装工事まで増改築に当たるとは限りませんが、線引きは契約ごとに異なり、判断が分かれ得ます。工事の前に契約書を確認し、法的な判断は弁護士にご確認ください。
借地借家法7条2項は、借地権者が残存期間を超えて存続する建物を築造する旨を通知し、地主が2か月以内に異議を述べなかったときは、存続期間の延長について承諾があったものとみなす規定です。契約の更新後の通知には適用されず、平成4年8月1日より前に設定された借地権(旧法借地権)では従前の例によります。また、契約書の増改築制限特約についての承諾とは別の問題として整理されるため、通知だけで足りると考えるのは危険です。
承諾料と地代は別々に決まるとは限りません。不動産鑑定評価基準は、借地条件の変更に伴って地代を改定する場合、条件変更承諾料や増改築承諾料の額を勘案するとしています。承諾料と地代改定をまとめて話し合うことで、双方が納得しやすい着地点が見つかることもあります。

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。