借地権付き建物に住宅ローンは付きにくい?金融機関が見るポイントと価格への影響を不動産鑑定士が解説
借地権付き建物は住宅ローンが付きにくいと言われるのはなぜか。担保の中身、残存期間、地主の承諾、流動性という理由を一般論で整理し、ローンの付きやすさが買い手の範囲を通じて借地権の価格に影響する鑑定士の視点を解説します。

「借地権付きの中古住宅を見つけたけれど、住宅ローンが通りにくいと聞いた」「親から相続した借地の家を売りたいのに、買い手がローンを組めずに話が進まない」。借地権付き建物(借地の上に建っている建物と、その借地権をセットにした不動産)について、こうした悩みをお持ちではないでしょうか。
確かに、借地権付き建物は所有権の土地付き建物に比べて、住宅ローンの審査で慎重に扱われやすいと言われます。ただし、その理由は「借地だからダメ」という単純なものではありません。金融機関が気にしているのは、担保としての確実さと、万一のときに売れるかどうかです。本記事では、借地権付き建物の住宅ローンが付きにくいと言われる理由を一般論として整理し、それが借地権の価格にどう影響するのかを私たち鑑定士の視点から解説します。なお、融資の可否や条件は金融機関ごとに異なり、ここで述べるのはあくまで一般的な傾向です。
借地権付き建物の住宅ローンが「付きにくい」と言われる理由
担保になるのは土地ではなく「建物+借地権」
所有権の住宅であれば、金融機関は土地と建物の両方を担保に取れます。借地権付き建物の場合、土地は地主のものですから、担保の対象は建物と、その建物を支える借地権になります。借地権がなくなれば建物も存続できないため、金融機関は借地権がどれだけ安定しているかを重視します。
残存期間とローン期間の関係
借地権には存続期間があります。借地借家法では当初の期間は30年以上、更新後は最初が20年、その後は10年とされ、旧法借地権では旧借地法の期間が適用されます。普通借地権や旧法借地権は更新されるのが原則ですが、金融機関によっては残存期間の長さをローン期間と照らし合わせて確認します。特に定期借地権(更新がなく期間満了で終了する借地権)の場合、残存期間が短くなるほど担保としての価値は下がっていきます。
地主の承諾(承諾書)の問題
借地権付き建物への融資では、金融機関が地主の承諾書の提出を求めることがあると言われています。建物に抵当権を設定すること自体に地主の承諾が法律上必要というわけではありませんが、金融機関としては、地代の滞納で契約が解除されるリスクや、将来の建替え・売却の際に地主の協力が得られるかを確認したいという事情があります。地主が承諾書への署名に応じない場合、融資が難しくなることがあります。
流動性(売りやすさ)の低さ
万一返済が滞った場合、金融機関は担保を処分して回収します。借地権付き建物は、第三者に売る際に地主の承諾が必要で、買い手の範囲も限られるため、所有権の物件より売りにくいと見られがちです。借地借家法第20条は、競売で建物を取得した人が、地主の承諾に代わる許可を裁判所に求める手続きを用意していますが、こうした手続きが必要になること自体が処分の手間として意識されます。
金融機関が確認しやすいポイント(一般論)
契約書と地代の支払い状況
土地賃貸借契約書が存在し、契約期間・地代・特約が明確になっているか。地代が滞りなく支払われているか。これらは借地権の安定性を示す基本的な資料です。口頭の契約で書面がない場合や、契約内容が古くあいまいな場合は、確認に時間がかかりがちです。
建物の登記名義
借地借家法第10条は、借地上に借地権者名義で登記された建物を所有していれば、借地権を第三者に対抗できると定めています。建物の登記名義が借地人本人になっているかは、借地権の保全の観点からも重要です。相続後に登記が亡くなった方の名義のままになっていれば、先に整理しておく必要があります。
建替え・増改築の予定
購入後に建替えやリフォームを予定している場合、地主の承諾と承諾料が必要になることがあります。資金計画に承諾料を含める必要があるほか、承諾が得られるかどうかも融資の前提に関わります。建替え・増改築の承諾料の考え方は建替え・増改築の承諾料で解説しています。
住宅ローンの付きやすさが借地権の価格に影響する(鑑定士の視点)
ローンを使える買い手がいるかで市場が変わる
住宅を買う人の多くは住宅ローンを利用します。ローンが付きにくい物件は、現金で購入できる人や、事業として買う不動産会社などに買い手が絞られます。買い手の範囲が狭まれば、競争が起きにくく、成立する価格は下がる方向に働きます。反対に、地主の承諾書が得やすく契約内容も明確な借地権は、ローン利用者を含む幅広い買い手に届くため、価格面でも有利になり得ます。
評価基準が挙げる「借地権の態様」と一致する
不動産鑑定評価基準は、借地権の鑑定評価で総合的に勘案する事項として、将来の賃料改定の実現性、借地権の態様と建物の残存耐用年数、契約締結の経緯・経過期間・残存期間、授受された一時金、将来見込まれる一時金などを挙げています。また、借地権の態様として、地上権か賃借権か、堅固か非堅固か、契約が書面か口頭か、登記の有無なども考慮すべきとしています。これらは、金融機関が融資の際に確認するポイントとほぼ重なります。つまり、ローンの付きやすさを左右する要素は、そのまま借地権の価格を左右する要素でもあるのです。
条件の異なる二つの借地権付き建物
説明のための想定されるケースです。立地・建物・更地価格は同程度と仮定します。
- 物件A:契約書は書面で条件が明確、地主は承諾書に協力的、建物登記は借地人名義。想定される買い手はローン利用者を含む
- 物件B:口頭契約で経緯が不明、地主は承諾書への署名を拒否、建物登記は先代名義のまま。想定される買い手は現金購入者・事業者が中心
路線価図の借地権割合が同じでも、物件Aと物件Bでは買い手の範囲が大きく異なり、成立する価格にも差が生じ得ます。割合だけで両者を同じ価格と考えるのは適切ではありません。
借地権割合だけでは市場性の差は表れない
相続税評価で使う借地権割合は、地域ごとに一律に定められた課税上の割合です。個々の契約条件や地主の協力姿勢、ローンの付きやすさといった市場性の差は反映されません。割合と実際の取引価格の違いは借地権割合と取引価格の違い、借地権価格の全体像は借地権の価格・売却相場をご覧ください。
借地権付き建物を売る・買う前にできること
地主との事前の調整
売却を考えているなら、早めに地主と話し合い、買主の住宅ローン利用に協力してもらえるか、譲渡の承諾が得られるかを確認しておくことが大切です。譲渡時の承諾料については借地権の譲渡承諾料で解説しています。
条件を整理し、価格の根拠を持つ
契約書の整備、建物の登記名義の確認、地代の支払い記録の整理は、ローンの付きやすさと価格の両方にプラスに働きます。そのうえで、借地権の価格を鑑定評価で客観的に把握しておけば、地主との交渉や売却価格の判断に役立ちます。費用は料金をご覧ください。
売却は宅建業者へ
当事務所は宅建業者ではなく、売買や買取りは行いません。売却を進める場合は、地元の宅建業者をご紹介できます(紹介料は頂きません)。住宅ローンの可否や条件は、各金融機関に直接ご確認ください。
まとめ
- 借地権付き建物の住宅ローンが付きにくいと言われるのは、担保が建物+借地権であること、残存期間、地主の承諾、流動性の問題があるため
- 扱いは金融機関によって異なり、契約書・地代の支払い・建物登記・地主の協力姿勢が確認されやすい
- ローンの付きやすさは買い手の範囲を通じて借地権の価格に影響し、その要素は評価基準の総合勘案事項とも重なる
- 売却・購入の前に条件を整理し、価格の根拠を持っておくことが大切
借地権付き建物の売却を検討している借地人様(借地人様へ)、借地人から承諾書への協力を求められている地主様に、借地権の価格を中立の立場からお示しします。初回のご相談は無料です。ぜひ一度ご相談ください。
REFERENCES
免責事項
本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。
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