旧法借地権は買ってはいけない?そう言われる理由と、購入前に確認すべきポイントを不動産鑑定士が解説

「旧法借地権は買ってはいけない」と言われるのはなぜか。承諾料・更新料・地代改定・建替え・融資・流動性の6つの論点に分解し、逆に旧法借地権が持つ強い存続保護というメリットも踏まえて、購入前の確認ポイントを不動産鑑定士が整理します。

著者:吉田 健人·読了 約9分
旧法借地権は買ってはいけない?そう言われる理由と、購入前に確認すべきポイントを不動産鑑定士が解説

割安な中古戸建てを見つけたら「旧法借地権」と書かれていて、ネットで調べると「旧法借地権は買ってはいけない」という言葉ばかり目に入る。そんな経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

たしかに旧法借地権には、所有権の土地にはない負担や制約があります。しかし、「買ってはいけない」という一言で片づけるのは正確ではありません。旧法借地権には、借地人を手厚く守る仕組みというメリットもあるからです。大切なのは、何がリスクなのかを分解し、その物件で一つずつ確認することです。この記事では、私たち鑑定士の視点から、購入前の確認ポイントを整理します。

旧法借地権とは何か──新法との違い

平成4年8月1日より前に設定された借地権

借地借家法は平成4年(1992年)8月1日に施行されました。それより前に設定された借地権は、一般に「旧法借地権」と呼ばれます。借地借家法の規定は原則として旧法借地権にも適用されますが(附則4条)、**契約の更新については「従前の例による」**とされ(附則6条)、旧借地法のルールが引き続き使われます。

旧借地法の存続期間

旧借地法では、存続期間は堅固建物(鉄筋コンクリート造など)で60年、非堅固建物(木造など)で30年が原則で、契約で堅固30年以上・非堅固20年以上を定めればその期間となります。更新後の期間は堅固30年、非堅固20年です。期間の定めがない場合には、建物が朽廃(老朽化して建物としての効用を失うこと)すると借地権が消滅するというルールもあります。

旧法と新法の違いの全体像は旧法借地権のページで解説しています。

旧法借地権が「買ってはいけない」と言われる理由

「買ってはいけない」と言われる理由は、おおむね次の6つに分解できます。

お金の負担:承諾料・更新料・地代改定

  1. 承諾料 将来売却するときは譲渡承諾料、建て替えるときは建替え承諾料を地主から求められることがあります。借地非訟の実務では、譲渡の承諾料は借地権価格の10%程度、全面改築の承諾料は更地価格の3%〜5%程度が基準として紹介されています(日本地主家主協会の弁護士執筆の解説による)。
  2. 更新料 法律上の支払義務の規定はありませんが、契約の特約や合意によって支払う例があります。額について「東京都内では更地価格の3%と言われることがある」と紹介する弁護士の解説もありますが、法的な基準ではなく、地域や契約の経緯で大きく異なります。前の借地人が過去に更新料を支払っていても、それが将来の更新時の支払合意とまでは言えないとする下級審の裁判例が多いとも紹介されています。詳しくは借地の更新料をご覧ください。
  3. 地代改定 地代は将来増額を求められる可能性があります(借地借家法11条)。地代の考え方は地代の相場の解説をご参照ください。

建替えの制約

  1. 建替え 増改築禁止特約がある場合、建替えには地主の承諾が必要です。契約更新後の再築許可(18条)は平成4年8月1日以降に設定された借地権にしか適用されないため、旧法借地権では使えません。

融資と売りにくさ

  1. 融資 借地上の建物への融資では、金融機関から地主の承諾書などを求められることがあるといわれ、所有権の物件より手続の負担が大きくなりがちです。
  2. 流動性 借地であることを敬遠する買い手も少なくなく、将来売却しようとしたときに買い手が限られ、時間がかかる傾向があります。売却には地主の承諾も必要になるため、所有権の物件のように思い立ってすぐ売る、というわけにはいきません。

こうして分解してみると、6つの理由の多くは「地主との関係」と「契約の中身」に左右されることがわかります。同じ旧法借地権でも、契約書が整い、地主が協力的で、地代が適正な水準にある物件と、そうでない物件とでは、リスクの大きさがまったく違います。「旧法だから」という一点で判断するのではなく、個別の物件ごとに確認することが大切です。

それでも旧法借地権にはメリットがある

強い存続保護

旧法借地権の最大の特徴は、借地人の保護が厚いことです。地主が更新を拒絶するには正当事由が必要とされ、期間満了時に建物があれば、更新を請求したり使い続けたりすることで契約が続くのが原則です。定期借地権(契約期間の満了で確定的に終わる借地権)のように、期間満了で終了し更地にして返すことを前提とした権利ではありません。

取得価格が抑えられる

借地権は土地の所有権そのものではないため、同じ立地の所有権付き物件に比べて取得価格が低くなるのが一般的です。立地を重視しつつ購入予算を抑えたい方にとっては、選択肢になり得ます。

土地の固定資産税は地主に課される

土地の固定資産税・都市計画税は土地所有者である地主に課されます。借地人はその分を地代として負担している構造ですが、土地の税金を直接納める立場ではありません。税務上の詳しい取扱いは税理士にご確認ください。

鑑定士の視点:購入前に確認すべきポイント

契約書と経緯を読む

不動産鑑定評価基準は、借地権の価格を求める際に、借地権の態様として「契約が書面か口頭か」「特約の有無」「期間の定めの有無」「登記の有無」「堅固・非堅固」などを考慮するよう求めています。購入前には、少なくとも次の点を確認してください。

  • 契約書の有無と、設定時期(旧法か新法か)
  • 残存期間と、過去の更新の経緯・更新料の支払実績
  • 増改築禁止特約・建物の構造や用途の制限
  • 現在の地代額と、直近の改定時期
  • 地主が売却や建替えにどのような姿勢か

売出価格が借地権割合の計算と一致しても安心しない

CASE STUDY想定されるケース(架空)

借地権割合の計算は「課税上の目安」

説明のための仮の数値です。

更地価格4,000万円の土地で、路線価図の借地権割合が60%だとすると、単純計算では借地権は2,400万円です。

しかし、地代が周辺より高い、残存期間が短い、地主が建替えに否定的である、といった事情があれば、市場で成立する価格はこれより下がる方向に働きます。反対に、条件のよい借地権であれば計算値を上回ることもあります。

評価基準は「借地権の存在は、必ずしも借地権の価格の存在を意味するものではない」と明記しています。借地権割合は課税上の割合であり、取引価格の割合ではありません。価格の考え方は借地権の価格で解説しています。

将来の出口まで見通しておく

購入時には、将来その借地権をどうするかという「出口」も考えておくと安心です。選択肢としては、住み続ける、地主に借地権を買い取ってもらう、地主から底地を買い取って完全な所有権にする、第三者に売却する、といったものが考えられます。評価基準は、借地権者が底地を買い取る場合には、土地と建物が同じ所有者に帰属することで価値の増分が生じる場合があるとしています。地主との関係が良好であれば、こうした選択肢も現実味を帯びてきます。売却先を探す場合は、地元の宅建業者をご紹介できます(紹介料は頂きません)。

まとめ

  • 「旧法借地権は買ってはいけない」の中身は、承諾料・更新料・地代改定・建替え・融資・流動性の6つの論点に分解できる
  • 一方で、正当事由がなければ更新を拒絶されにくいという強い存続保護がある
  • 購入の可否は、契約書・経緯・地代・地主の姿勢を確認したうえで、価格が妥当かどうかで判断する

旧法借地権の物件を検討中の方、すでに旧法借地権をお持ちで将来の売却や建替えを考えている借地人様は、売出価格や承諾料が妥当かどうかを中立の立場で確認してみてください。当事務所は売買の当事者ではない不動産鑑定士として、根拠を示した価格を算定します。費用は料金ページをご覧ください。

初回のご相談は無料です。ぜひ一度ご相談ください。

REFERENCES

  1. 借地借家法(e-Gov法令検索)
  2. 不動産鑑定評価基準(国土交通省)
  3. 日本地主家主協会「第7回 借地非訟の概要」
  4. 内藤寿彦法律事務所「借地の更新料」

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

借地権・底地の価格や承諾料を不動産鑑定士がどう評価するか、費用や進め方は借地・底地の不動産鑑定のページでまとめています。

FREE CONSULTATION

鑑定が必要かどうかのご相談だけでも歓迎です

記事に関連するお悩みについて、不動産鑑定士に直接ご相談いただけます。

関連記事

借地権の売買で承諾料は誰が払う?売主・買主の負担と売買価格への織り込み方を不動産鑑定士が解説
承諾料・更新料・税金

借地権の売買で承諾料は誰が払う?売主・買主の負担と売買価格への織り込み方を不動産鑑定士が解説

借地権を売買するとき、地主に払う譲渡承諾料は売主と買主のどちらが負担するのか。地主との関係、地域の慣行、売買契約での取り決め、売買価格への織り込み方を、不動産鑑定評価基準の考え方とあわせて不動産鑑定士が整理します。

読了 約9分

借地権の建て替えを地主に拒否されたら?増改築禁止特約・借地非訟・旧法借地権の扱いを不動産鑑定士が整理
交渉・紛争・借地非訟

借地権の建て替えを地主に拒否されたら?増改築禁止特約・借地非訟・旧法借地権の扱いを不動産鑑定士が整理

借地上の家を建て替えたいのに地主に拒否された。そんなとき、まず確認すべき契約の特約、借地借家法7条・17条・18条の仕組み、旧法借地権での扱い、建替え承諾料の考え方を、不動産鑑定士が一般論として整理します。

読了 約10分

借地権付き建物に住宅ローンは付きにくい?金融機関が見るポイントと価格への影響を不動産鑑定士が解説
価格と評価の実務

借地権付き建物に住宅ローンは付きにくい?金融機関が見るポイントと価格への影響を不動産鑑定士が解説

借地権付き建物は住宅ローンが付きにくいと言われるのはなぜか。担保の中身、残存期間、地主の承諾、流動性という理由を一般論で整理し、ローンの付きやすさが買い手の範囲を通じて借地権の価格に影響する鑑定士の視点を解説します。

読了 約9分

電話で相談無料相談を申込む